ボクらを作ったオモチャたち
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「オモチャ」という言葉を聞いた時、真っ先に「子供に夢を与えるもの」的な耳に心地よい言葉を思い浮かべる人にとって、Netflixオリジナルのドキュメンタリー『ボクらを作ったオモチャたち』は生々しすぎると感じるかもしれません。なぜならアメリカやその他の国で大ヒットしたオモチャに携わった人たちの口から出てくるのは「金、契約、名誉欲、食い違う主張、訴訟、倒産、自殺」といった殺伐とした話題だからです。
当たり前の話ですが、オモチャは金を稼ぐという目的のもとに多くの人間が関わる会社が生産する「商品」です。そして娯楽という同カテゴリーの商品である映画やアニメや漫画が「監督」「作者」といったいわゆる「中の人」をクレジットして売られるのに比べ、オモチャの箱には誰がプロデュースし設定を考えデザインし原型を作ったかはどこにも表記されません。でも大ヒットすると莫大な利益を生み出し社会的な影響を及ぼし多くの子供(や元子供)の心に残り大袈裟な場合人生の行く末を決定する力を持ちます。
つまり娯楽産業と工業製品両方のキラキラ(もしくはギラギラ)した要素を併せ持つのが現代のオモチャなのであり、この内側を描こうとすれば生々しくならない訳がありません!
この作品(現在2シーズン ※編集部注:記事執筆は2018年10月。現在3シーズンまで放送)で扱われるオモチャは
1-1 スター・ウォーズ
1-2 バービー
1-3 ヒーマン
1-4 G.I.ジョー
2-1 スター・トレック
2-2 トランスフォーマー
2-3 レゴ
2-4 ハローキティ
と、60、70年代以降に生まれた人は男女問わず、ほとんど名前くらい知っているか見たことあるものばかりだと思います。私も70年生まれで子供の頃は(現在ではめっきり見かけなくなった)オモチャ屋の前に座り込んで親を困らす駄々ごね経験の持ち主であり、オモチャ好きか嫌いかつったら完全に好き方面の人間ですので、日本ではあまり売れた記憶のないヒーマンも含めて知っています。ですが今回この作品を観て、全てのオモチャに実写もしくはアニメの映像化作品や漫画化が存在することを知り、改めてオモチャと映像の関係の濃さを思い知らされました。
映画ありきで映画の大ヒットと共に爆発的な売り上げを見せたスター・ウォーズ(そしてそれに追随しようとして迷走したスター・トレック)は当然として、トランスフォーマーやG.I.ジョーはアニメ化され人気を博した後、映像技術の発達により実写化され、レゴはCGアニメで映画となり、日本では未放映な本来口がないハローキティが口を開けてしゃべるアニメや番組の最後に子供に向けて教訓を告げるヒーマンのアニメ(私見ですがこれは傑作コメディ映画『ブリグズビー・ベア』(’17)のイメージソースのひとつだと想像してます)があり、しかもヒーマンはドルフ・ラングレンにより『マスターズ/超空の覇者』(’87)として実写化されエライことに!
つまり映像はイメージから、オモチャは物理的現実から、お互いが2つの車輪となって「物語」もしくは「世界観」を表現するために補い合う存在だと言えると思います。そして大勢の人が関わる以上、さまざまな問題が起きるのはどの業界でも当然です。
自分がオモチャを考えたと言い張る人たち、権利を会社に売っちゃったために死ぬまで後悔した人、権利で揉めて最終的に自殺した人…。そんな泥臭い人間模様と個人を越えた企業の思惑と大金、そこに「物語」という娯楽が加わることによって生まれるオモチャについて、昔のCMや当時の映像などを織り交ぜながらポップに、しかも(恐らく言える範囲で)赤裸々に描いたのがこの作品です。
でもどんな内側を知ろうと、そのオモチャが生み出す「夢」は決して色褪せることはない――そして我が家は新しいオモチャによってどんどん狭くなるのです…。
※Netflixオリジナルシリーズ『ボクらを作ったオモチャたち』シーズン1〜3独占配信中
【視聴リンク】
https://www.netflix.com/jp/title/80161497
*本レビューは雑誌「DVD&動画配信でーた」(KADOKAWA)2018年11月号の「厳選 動画配信の掘り出しモノ」コーナーに掲載された記事の再掲となります。
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内容・あらすじ
スター・ウォーズ、トランスフォーマーからハローキティまで、多くの子供(と元子供)に愛されるオモチャたち。生々しいお金の話や人間模様も含めた貴重な証言を交えその成り立ちを描くドキュメンタリー。