ジャン=クロード・ヴァン・ジョンソン
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これは「JCVDがJCVJを経由してJCVVを取り戻すドラマ」だ。JCVDがジャン=クロード・ヴァン・ダムなことはわかっていただけると思うが、タイトルにもなっているJCVJ(ジャン=クロード・ヴァン・ジョンソン)って何だ?と戸惑われるかも知れない。JCVVに至っては相当なヴァン・ダムファンでなければ伝わるまい。実はヴァン・ダムは芸名で、本名はJCVV(ジャン=クロード・ヴァレンヴァーグ)なのである。
自らプロデュースも務めるヴァン・ダムが演じているのは、落ち目のアクションスター、ジャン=クロード・ヴァン・ダム本人!って、似たコンセプトで作られた2008年の『その男ヴァン・ダム』と混同しそうになるが、本ドラマはさらに手が込んでいる。映画スターのヴァン・ダムは世を忍ぶ仮の姿。実は凄腕のエージェント、コードネーム“ジャン=クロード・ヴァン・ジョンソン”として活躍した過去があり、人生に行き詰ったJCVDが“ジャン=クロード・ヴァン・ジョンソン”として諜報戦の現場に復帰しようと決意するところから、物語が始まるのだ。
そんなわけで、元凄腕スパイのJCVJは任務のために、新人監督がブルガリアで撮るアクション映画版『トム・ソーヤの冒険』にJCVDとして参加。映画スターとしての栄光を取り戻し、伝説のスパイとしてミッションをコンプリートし、未練タラタラの元恋人とよりを戻すために、ジャン=クロードが涙ぐましい奮闘をするのである。
思えばジャン=クロード・ヴァン・ダムはスティーヴン・セガールと並ぶB級側のアクションスターとして、ずっと半笑いで見られてきたように思う(ファンのみなさんごめんなさい!)。当然ながら演技力で評価されることもなく、得意の飛び蹴りや股割りを自らネタにしながら、芸能界の荒波をくぐってきた。そんな自分自身に対する自嘲と矜持が入り混じって生まれたものが前述の『その男ヴァン・ダム』だったとするなら、「ジャン=クロード・ヴァン・ジョンソン」のヴァン・ダムには禊ぎを済ませて吹っ切れたような自由さがある。
いい歳こいて大人になれない主人公=自分を笑い飛ばし、老いを受け入れることで渋みを醸し出し、それでもなお衰えぬアクションを炸裂させて、「オレだってこれくらいできるのだ!」とばかりに一人二役(いや、見方によっては一人三役、四役をこなしている)で演技力までアピールするヴァン・ダム。そして内輪ギャグとしてやたらと『タイムコップ』(1994)を推すなあと思っていたら、それすらもストーリーに組み込みメタにメタを重ねるウルトラCでオールドファンの留飲を下げさせる。
なによりも本作のヴァン・ダムはあふれんばかりの愛嬌を放って光輝いているのである。このドラマで初めてヴァン・ダムを知るもよし、しばらくヴァン・ダム離れしていたことを反省するもよし、「いや、昔からずっとヴァン・ダムは凄かったんだ!」と筆者のような中途半端なファンを叱り飛ばしてくれてもいい。50代半ばだからこそ描き得たJCVDの伝説と生き様が、一話30分、全6話とコンパクトに収まってしまう辺りもなんだか愛らしくてたまらない。どうもシーズン2はやらないようだが、できることならお爺ちゃんになるまで続けて欲しいシリーズである。
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内容・あらすじ
引退していた元アクションスター、ジャン=クロード・ヴァン・ダムが復帰を決意。しかし復帰するのは俳優業ではない、伝説の凄腕スパイ“ジャン=クロード・ヴァン・ジョンソン”として復帰するのだ。表の顔であるヴァン・ダムとして映画撮影に参加したジョンソンは、元恋人で相棒エージェントのヴァネッサと共に麻薬組織の正体を探るのだが……。