「13の理由」独占インタビュー

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「13の理由」にシーズン2があるって本当ですかっ!? 脚本家ブライアン・ヨーキー来日インタビュー

謎の自死を遂げた少女から同級生に届いた13面のカセットテープ。そこには、彼女を悲劇の結末へと導いた13の理由が、彼女自身の声によって吹き込まれていた・・・。「2017年に最もSNSでツイートされたミステリードラマ」とアメリカで大反響を呼び、日本でもジワジワ話題を広げていたあのドラマが、早くもシーズン2をひっさげてやって来る!・・・えっ、あそこで完結してなかったの!?

 2018.5.13

13 REASONS WHY

配信系ドラマの魅力は、前評判も知らずにふらっと見始めたものが思いがけず大当たりの逸品だったりすること。
Netflixオリジナルシリーズ「13の理由」は、まさに私にとってのソレでした。
製作・脚本を手がけ、複雑に絡み合う人間模様をみごとな群像劇に仕立て上げたのは、ミュージカル舞台「Next to Normal」でトニー賞やピューリッツァー賞に輝いたブライアン・ヨーキー氏。
_AAA2625氏の来日に伴い、このたびShortcutsでは同じく脚本家のはしくれとして演劇界をよちよちと闊歩するワタクシ・桑原裕子が、図々しくも己の劇団KAKUTAのDVDを持参で駆けつけ、インタビューを敢行させていただきました!
 
しかし。こうしたインタビューは初体験/リッジモント・ハイな私。
不慣れで未熟でネタバレ有り。ドラマについて訊くはずが、のっけからずいぶんと重い社会問題についてヨーキーさんに切り込むことに・・・。
どうか皆さん、寛容なお心で読んでいただけると幸いです。
では、ヨッ、ヨーキーさんっ、よろしくお願いしますっ!!

※注意!:シーズン1のネタバレあります

yokeysansyuzsai--私は原作のティーンズ小説『13 Reason Why』のことは知りませんでしたが、「13の理由」が配信されてすぐに一気観をして、とても衝撃を受けたんです。特に、計画的とも言えるハンナの“選択”については、若者たちの間で賛否両論の議論が起こったんじゃないかと思うんです。実際にドラマを観た視聴者の反応はどうでしたか?
 
ブライアン・ヨーキー(以下ヨーキー) アメリカではこのドラマを観た若者たちの間でさまざまな“会話”が起きました。多くはハンナに対して同情的であったり、理解を示す反応でしたが、一方で批判的な意見もかなり出ました。ハンナの決断したことが果たして良いのか悪いのか。「違う選択肢があったんじゃないか」と、かなりの激論になったんです。
 
――このドラマの狙いは、友達同士や親子の間でそうした“会話”を生み出すことだったんでしょうか?
 
ヨーキー それが一番重要でした。理解するためにみんなが話しあうこと。悩みを抱えている人、うつ病だったり、いじめを受けていたり、または孤独を感じている、そういう人たちが、誰かに打ち明けるきっかけになってくれれば、という思いがあったんです。そして、若い人たちにとって親と話すきっかけになったり、とにかくなにかしらの“会話”をしてくれれば、このドラマの目標は達成したと言えるでしょう。
 
――私が本当に辛かったシーンは、ブライスがハンナを襲ったレイプシーンです。とりわけショックだったのは、ハンナは恐怖のあまり体がすくんでしまって嫌がるそぶりすら見せられなかった、相手が気づかないほどの反応しか出せなかったというところでした。
 
ヨーキー ブライスは、ハンナが嫌がってることに気づいてはいると思うんです。ハンナも最初は逃げようとしましたし。でも、やはり力ではハンナはブライスに叶わない。そこでハンナは、それ以上は抵抗しても無駄だとわかってしまい、体がすくんでしまったんでしょうね。
 
――女性からすると、このときのハンナの反応はとても共感できるものだったと思うんです。ああいう形でレイプされ、自分が本当は嫌なんだということを発信するタイミングを失うと、後になって「自分が悪かったんじゃないか」「私のせいなんじゃないか」と(被害者である)自分の方が反省してしまったりもします。男性視聴者も同じく共感したんでしょうか?
 
ヨーキー そう願ってます。アメリカでは“合意”ということについて非常に大きなディスカッションが行われてるんですが、この場合、ブライスはハンナの“合意”は得ていないですよね。しかし今仰ったように、やはりああいう状況になってしまった後に犠牲者が自分を責めるというのは、非常によくあることなんです。
 
――「#MeToo」の発信などで、性暴力について議論される機会は日本でも徐々に出てきました。でもその理解についてはまだとても低いと感じています。男性もそうですが、同性である女性が味方になってくれない現象があると感じるんです。
 
13 REASONS WHYヨーキー そうしたことはシーズン2でも大きなテーマとして取り上げています。例えば性暴力やセクハラがあった場合、さまざまな混乱が起きますよね。「いや、セクハラやレイプだとは思わなかった」とか「犠牲者の方が悪い」といった。でも実際はそんなに複雑なことではなくて、「合意があるかないか」、それだけなんだと思います。
 
――もしも・・・ハンナがもうちょっとだけ大人だったら、違う結末になっていたと思いますか?
 
ヨーキー なんとも言い難いところですが・・・あの時のハンナはとても孤立してしまっていて、精神的にもかなりのダメージを受けていたから、他の選択肢は考えられなくなっていたんじゃないかとは思います。それは年齢とは関係なく起こりうることですよね。でも、“若い”ということもひとつポイントだと思います。
 
――ドラマが進んでいく中で、何度もハンナを助けられそうな瞬間があります。でも最後は誰も彼女を救えなかった。このドラマを観て思ったことのひとつは、「最初は誰もが敵だったわけじゃない」ということ、そしてもうひとつは「でも誰を信用していいかわからない」ということでした。ブライアンさんなら、どうすれば彼女を救えたと考えますか?
 
ヨーキー 登場人物たち誰もがさまざまな手段で流れを変えることはできたとは思いますが、誰かが誰かに対して「この人を救うべきだ」と言うのはとても難しい。ただ言えるのは、ハンナに関わったすべての人が、それぞれにもう少し、自分の言動が彼女にどんな影響を与えるかを考えて欲しかった。それは、われわれ全員もできることなんです。誰かに手をさしのべたり「大丈夫?」と声をかけることは、とても大事なことだと思います。
 
【シーズン2、という単語がヨーキー氏の口からさりげなく出たことに「やっぱりあるんだ!」と密かに興奮しつつ、どっぷし重い話をしつこく聞き込んでしまいましたが、そのすべてに対して真摯に耳を傾け、聡明で暖かい回答をくれたヨーキー氏。思わずそのサンタクロースのように大きな懐に飛び込みそうになりました。でもここは脚本家同士。襟を正しつつ少し話題を変えて、同業者として聞いてみたかったことを】
 
――私も自身の劇作で、多くの登場人物が主軸となり複数の物語を進行していく群像劇を描くことが多いんです。この作品でも、ハンナやクレイといった学生たちだけでなく、親や先生とあらゆる側の視点にスポットを当てて描いてますよね。
 
13 REASONS WHYヨーキー 原作の小説もそうですが、テレビシリーズでも群像劇として「すべのことがすべてのことに影響を与える」という描き方をしてます。でもこれはとても仏教的な考えなので、西洋の人にはあまり理解できないんですよ。
 
――えっ、そうなんですか??
 
ヨーキー はい。「色々な人たちの言動が、また色々な人たちに影響を与えていく」という考えは西洋ではあまり浸透してないんです。
 
――あれだけ大勢のキャラクターがいる中でどの人物にも共感できるのが素晴らしいと思ったんですが、中でも描くのが難しかったキャラクターはいましたか?
 
ヨーキー うーん・・・(少し考えて)ブライスですね。単なる悪党にするなら楽なんですけど、悪いことはしても、単なる悪人じゃない。実際、ブライスのような男性はとても多いですから。
 
――私も行く末が一番気になっていたのがブライスです! 彼はシーズン2にも登場すると思っていていいんでしょうかっ!?
 
ヨーキー ええ、シーズン2でのブライスの役割は大きいですよ。彼に本当にちゃんとした罰が下るのか。“正義”とは何かを問うのもこのドラマのテーマですから。
 
【シーズン2への期待が膨らむ中、アッという間に取材時間は終了間近に。ヨーキーさん、最後にひとつだけ・・・】
 
――あの・・・「13の理由」はそのタイトルの通り、13面のテープで構成されていたのでシーズン2があるとは思いもしなかったんですが・・・初めから続編については想定してたんですか?
 
ヨーキー 最初はそんなつもりじゃありませんでした。でもやがて、このキャラクターたちについてもっと知りたいという思いが芽生えてきたんです。ブライスはどうなった? ジェシカはどうなる? そう考えると、もしかすると視聴者の皆さんも知りたいんじゃないかと思い始めて、シーズン2の構想を考え出したんです。
 
――うーんなるほど! 私も、アレックスや・・・
 
ヨーキー アレックスね!(含みを持たせた笑みで)アレックスに何があったのかとかね。
 
――はい! トニーの秘密ももっと知りたいです!!
 
ヨーキー ええ、ありますよ、トニーには秘密が。ふふふ。(不敵に笑う)
 
――トニーには秘密があるって書いちゃっていいですか?
 
ヨーキー 今のところ書いちゃいけないようなことは何も言ってませんよ。ネタバレはしてません(笑)。
 
――わ、わかりました。シーズン2の配信を本当に楽しみにしています!
 
実はヨーキー氏に会いに行ったこの時、シーズン2の配信日はまだ発表されてなかった。
ところがこの原稿を書いている最中、突如Netflixから私のスマホに飛び込んできたシーズン2予告編の知らせ! 予想以上に早いじゃないですかヨーキーさん!!
ハンナの死の理由が明かされ、完結したはずの13面の物語。
しかし――
「ハンナだけじゃない」!?
 
【シーズン2予告編】

 
Netflixオリジナルシリーズ「13の理由」シーズン2は2018年5月18日に独占配信開始!!
 
【視聴リンク】
https://www.netflix.com/title/80117470

作品データ

製作年:2017年~

製作国:アメリカ

言語:英語

原題:13 Reason Why

原作:ジェイ・アッシャー

脚本:ブライアン・ヨーキー