ピーウィーのビッグ・ホリデー

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何回だってやり直せるよ(罪の度合いにもよるけどね)!『ピーウィーのビッグ・ホリデー』

あんな事こんな事いろいろ乗り越えてジャド・アパトーとタッグを組んだ永遠の父ちゃん坊やピーウィー・ハーマン復活の狼煙!

 2016.8.30

「♪ピーウィーハーマンハービンファン イーアーイーアーオー♪」

「ワッコーショケン」

 

つんつるてんのグレースーツに赤い蝶ネクタイでほっぺたに薄く紅を差した父ちゃん坊やの白人がおもちゃの自動車に乗って歌っている・・・

 

90年代初頭、ポール・ルーベンスというアメリカのコメディアンが生み出した「ピーウィー・ハーマン」というキャラクターが証券会社のCMやとんねるずが自身の番組内でコーナーとしてパクることによって日本のお茶の間に露出していた時期が一瞬だけありました。

 

まあいわゆるバブル経済末期の狂乱が巻き起こした幾多の乱気流で出来たエアポケットのうちのひとつだったのでしょうが、その数年前に確か特撮映画専門誌「宇宙船」で紹介されてたティム・バートン長編初監督日本未公開作品『ピーウィーの大冒険』の情報によりその存在を気にしていた私としては、「イケてる奴らの鼻を明かしてやった」と勝手に誇らしく思ったものでした。

 

ティム・バートンといえば『ビートルジュース』『シザーハンズ』『バットマン』で評価はうなぎ登り状態、そんな彼の長編一作目である『ピーウィーの大冒険』はバカバカしさと可愛らしさと切なさがギュッと詰まっていて、どこからがティムでどこまでがピーウィーなのかわからないほど素敵に融合した映画でした(勢い余って無許可でゴジラを出して東宝とゴニョゴニョしたというおまけ付きで)。

 

 

ピーウィーは元々『ピーウィーのプレイハウス』という子供向けテレビ番組で人気に火がつきました。

目がチカチカするほどのポップなセットでピーウィーが人間やら(無名時代のローレンス・フィッシュバーンとかも出てます)人間以外やらとミニチュアや合成やコマ撮りの特撮盛り沢山で繰り広げるナンセンスなやり取りは当時のアメリカのお子様や大人達をさぞトリップさせた事でしょう(こちらもNetflixで見られるので是非!)

で未公開ながら映画化により日本でも徐々に認知度が高まり、アメリカントイのお店に置かれたこの番組のピーウィーや目のついた椅子のフィギュアにけっこうな値段がついたりしていました。

 

 

そしてCMで一気に日本でも火がついた・・・と思った矢先の1991年ポルノ映画館で自分で自分のハーマンをピーウィーしてるのが見つかり逮捕!

 

これがゲスさを売りにしてるコメディアンだったらまだしも、子供のようなしゃべり方で性的な生臭さから遠く離れてることでポップさを体現していたキャラクターの中の人が最も生臭いことをやってしまったためにイメージは大暴落、現れた時と同じくらいの唐突さでお茶の間から消えたのでした・・・・

 

ピーウィーとしての活動は自粛せざるを得なくなったポール・ルーベンスですが、侠気を発揮したティム・バートンが役者として『バットマン・リターンズ』にキャスティングしたりして細々と活動・・・・と思ったら2002年児童ポルノ所持でまた逮捕!!

 

私はジャックスの「ラブ・ジェネレーション」の

「子供の中に 大人は生きてるんだ」

という一節を思い出したりしながらピーウィーを記憶の海に沈めていました・・・・・

 

 

ですが!!

 

2016年Netflixでピーウィー・ハーマンとしての新作映画公開!

 

しかも製作が『俺たちステップ・ブラザース』のジャド・アパトー!

しかも音楽が『ピーウィーのプレイハウス』メインテーマを書いてるDEVOのマーク・マザーズボー!

しかもピーウィーの日本語吹き替えが『ピーウィーの大冒険』DVD未収録の吹き替えと同じ島田敏!

しかも共演が「最もHOTな独身セレブハリウッド2014」に選ばれた(らしいけどよく知らない)けど漫画家として「最も口に出して読みたい人名2016」に私が勝手に選んだジョー・マンガニエロ!

 

生きてるってつらい事も多いけど、生きてると思ってもみなかった出来事に出会えるという事実を改めて思い知らされました。

 

もしかしたらいきなり60過ぎて色々やらかし「父ちゃん」と「坊や」の落差が更に極度になったピーウィーがラス・メイヤー映画から抜け出たような巨乳泥棒3人組とお色気無しでからんだりするのを見せられても乗り切れない、という人がいるかも知れませんが、頭を空っぽにして単純に酒でも(ルートビアも可)飲みながらダラーンと見ていると「あーなんかバカバカしいけど楽しいなあ」と思えること間違い無しです!

 

ですが可能であれば『ピーウィーの大冒険』を見てからのほうがバカバカしさと可愛らしさと切なさ以上の大きな感情の流れが沸き起こり、諸々を乗り越えて体を張りつつ甲高い笑い声を上げて力いっぱい演じるピーウィーを見ているうちに「何回でもやり直すことが出来る」という事実に感動を覚えることでしょう(もちろんやったことの内容にもよりますが)。

 

 

最後に『ピーウィーの大冒険』日本語吹き替え入りとDVD化されてない『ピーウィー・ハーマンの空飛ぶサーカス』そしてこの『ピーウィーのビッグホリデー』をセットにしたソフト化と、今後ピーウィーが自分のポールをルーベンスして捕まったりしない事を祈りつつ本稿を終えたいと思いますンガニエロ!

作品データ

製作年:2016年

製作国:アメリカ

言語:英語

時間:89min

原題:Pee-wee's Big Holiday

監督:ジョン・リー

脚本:ポール・ルーベンス、ポール・ラスト

出演:ポール・ルーベンス ジョー・マンガニエロ