ストレンジャー・シングス 未知の世界

NETFLIX

80年代生まれのクリエイターが80年代カルチャーをカバー 『ストレンジャー・シングス 未知の世界』

Netflixオリジナル作品『ストレンジャー・シングス 未知の世界』は、おそらくだけど対象となる視聴者をかなり絞り込んで作られたドラマではないだろうか。ターゲットは、1980年代に思春期を過ごした現在の40代半ば~後半の世代。つまり自分はまさにドンピシャの視聴者ということになる。

 2016.8.19

物語の舞台は1983年のインディアナ州。仲良し4人組のうちのひとり、12歳の少年ウィルの失踪を皮切りに、不思議な力を持つ少女との出会い、謎の怪物の出没と、少年たちの周囲で奇妙な出来事が起き始める。
 
あらすじを見てもお分かりの通り、このドラマは『E.T.』『ポルターガイスト』『キャリー』『IT-イット-』『スタンド・バイ・ミー』といったスピルバーグ、キング作品を中心としたSFファンタジー、さらには『アルタード・ステーツ~未知への挑戦~』などの通好み系からジョン・ヒューズ映画まで、とにかく80年代に人気を博した一連の作品群の影響が色濃く表れた内容となっている。
 
いや、「影響」「オマージュ」程度ではない。これはもはや音楽でいうところの「カバー」という言葉がしっくり来るくらい、登場するさまざまな要素の模倣ぶりはとても直接的だ。つまりは前述の作品たちへの非常に強い愛着や憧れ「のみ」を原動力として作られたドラマと断言してしまって言いだろう。ただ最初に書いたような視聴者層を、意識的に狙ったようなあざとさは不思議と感じられない。
 
少年たちの素朴な友情や異性への憧れ、主人公たちから少し上の高校生たちが感じる大人の世界への戸惑い、中年期に差し掛かり人生に失望した大人たちといった、これも往年のスティーヴン・キング作品ではお馴染みのドラマが、魅力的な俳優たちによって演じられている。単に好きなものをちりばめましたというのではなく、集められた要素が有機的に結びつき、結果的にどこにもないようなオリジナリティある作品となっているところが面白い。
 
驚いたのは今作のメイン・クリエイターで双子の兄弟であるザ・ダファー・ブラザーズが1984年生まれと若く、80年代スピルバーグ作品をリアルタイムで体験した世代ではない、ということ。
 
ノスタルジーではなく、むしろこの時代の作品を新鮮なものとして楽しんだ世代が作ったからこそ、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』はフレッシュで勢いのあるドラマになったのかもしれない。
 
 
※Netflixで配信中

作品データ

製作年:2016

製作国:アメリカ

言語:英語

原題:Stranger Things

監督:ザ・ダファー・ブラザーズ

脚本:ザ・ダファー・ブラザーズ

出演:ウィノナ・ライダー、デヴィッド・ハーバー、マシュー・モディーンほか